可能性から実用性へ

近代的なイノベーションが織りなす複雑なタペストリーからインテリジェンスを引き出す

現在や近い将来に商業的かつ実用的なアイデアとして機能するものは、少し前の研究や発見の上に成り立っています。つまり、基礎・応用研究の垣根を超えるイノベーションやアイデアのデータは、産学の両分野で意思決定に必要不可欠なのです。

つまり、基礎研究と応用研究の境界を越えたイノベーションとアイデアデータは、学術・商業を問わず、イノベーションの意思決定の基本要件となるのです。

イノベーションの糸の行く先を、壮大なタペストリーの端で見据えているのです。

そこが、つまり、可能性の最先端です。

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過去のTop 100 グローバル・イノベーターレポート

12年にわたるイノベーションの卓越性の評価

クラリベイトでは2011年以降、世界を取り巻くイノベーションの状況を探求し続けてきました。世界的に変化するアイデア創出の形に合わせて評価方法が進化していますが、私たちの手法も同様に進化を遂げてきました。2022年に刷新した、イノベーション評価の新たな手法では、継続性や卓越性に重きを置いており、あらゆるアイデアが対等に比較されます。

このセクションでは、参考資料としてクラリベイト™創業以降3年間分の過去レポートを無償でご覧いただけます。

可能性への道を照らし出す

新たな知見の創出は、複雑な川の流れに似ています。曲りくねり、深く淀み、渦を巻き、急流が走る。こうした紆余曲折がある中で、啓蒙の発見から可能性の地平線へと流れ進み、科学技術が発展していくのです。

現在、このようなイノベーションの流れは膨大な数の支流によって支えられています。多くの異なる研究分野のグループからアイデアが提供されているのです。

この壮大な流れを辿り、可視化することで、アイデア創出に関するデータを必要とする意思決定者やイノベーターの前途を開くサポートをするのがクラリベイト™です。

大河のようなシステムの中では、アイデアは形を変えながら変化します。単なる「アイデアの発見」が発展することで、そのアイデアがもたらす影響や成果が見えてきます。このようなアイデアは魅力溢れるチャンスを残し、イノベーションそのものに対して新たな方向性を示してくれます。

クラリベイトが持つ人類の発明活動や世界の科学的発見に関する情報を集約することで、技術や技術がもたらす知見の変遷を追跡できます。可能性レベルのものから、企業が構築・供給できる実用的な工学的ソリューションに変化する様子を追跡できます。

Top 100 グローバル・イノベーター™による業績やアイデアの背景には、可能性の道を切り開いた研究、つまりTop 100の発明によって参照された研究が存在します。

ここでは、Top 100の業績に何らかの形で貢献した、より基礎的な科学技術に着目します。Top 100 グローバル・イノベーター 2023による被引用回数が最も多い研究を行う50の研究機関を選出しました。選出された研究機関の知見こそが、工学的ソリューションの骨子を支えているのです。

Top 100 グローバル・イノベーター 2023に引用された組織 国/地域 Top 100 グローバル・イノベーター 2023の発明に引用された論文の数
Chinese Academy of Sciences 中国本土 2,134
MIT 米国 1,790
Stanford University 米国 1,669
University of California, Berkeley 米国 1,424
Harvard University 米国 1,286
Tsinghua University 中国本土 1,075
Nanyang Technological University シンガポール 1,013
University of Michigan 米国 973
University of California, San Diego 米国 961
University of Toronto カナダ 931
Seoul National University 韓国 887
GeorgiaTech 米国 865
University of Illinois 米国 819
TU Munich ドイツ 819
University of Washington 米国 808
Carnegie Mellon University 米国 801
UCLA 米国 794
Alphabet 米国 762
University of Texas, Austin 米国 761
University of Melbourne オーストラリア 760
University of Florida 米国 754
National University of シンガポール シンガポール 753
Monash University オーストラリア 715
University of Wisconsin 米国 693
KAIST 韓国 693
Microsoft 米国 688
University of Oxford 英国 685
University College, London 英国 670
Swiss Federal Institute of Technology Lausanne スイス 656
Rensselaer Polytechnic Institute 米国 653
University of Maryland 米国 641
Zhejiang University 中国本土 635
Cornell University 米国 631
University of Tokyo 日本 629
University of Cambridge 英国 627
National Taiwan University Taiwan 624
Autonomous University of Barcelona Spain 612
Imperial College, London 英国 608
University of California, Santa Barbara 米国 607
Johns Hopkins University 米国 604
Korea University 韓国 602
CNRS フランス 598
NYU 米国 573
University of Pennsylvania 米国 572
Peking University 中国本土 565
RWTH Aachen University ドイツ 558
Hong Kong University of Science and Technology 香港 556
Shanghai Jiao Tong University 中国本土 542
Columbia University 米国 540
Yale University 米国 526

可能性の源

Top 100 グローバル・イノベーターによる被引用回数が最も多いTop 50の研究機関は多岐にわたります。

最多選出となったのはChinese Academy of Sciencesに属する研究機関による研究ですが、Top 50を見ると米国の機関の選出が突出しており、Top 50の半数を米国の大学が占めています。

二次的な発明実現に貢献する研究機関の分布は地理的な集中を見せており、3機関以上選出されたのは4つの国・地域のみとなりました(米国、中国本土、英国、韓国)。

今年度のTop 100 グローバル・イノベーターには、米国、中国本土、韓国の企業が複数選出されましたが、英国は1社(Rolls Royce)のみの選出にとどまっています。この違いは、研究やアイデアを世界中に輸出する英国の研究基盤の盤石さを物語っています。

研究が引用された研究機関の数(国・地域別) 被引用回数に基づくTop50の研究機関の数(Top 100 グローバル・イノベーター 2023による発明を研究論文まで追跡)

研究領域

発明と研究論文の関連性をTop 100からTop 1,000 グローバル・イノベーターにまで広げて評価すると、研究との関連性の強さが見えます。アイデアの市場展開と学界の科学研究に密接な関わりがあることがわかりました。

発明1件あたりの被引用数が最も多い研究分野は製薬セクターです。新薬や治療法の開発に向けたライフサイエンス研究の根本的な重要性を反映しています。また、より広範な考察や、新たなアプローチ発見のために研究が必要とされていることを示しています。約20年間におよぶ産学連携研究のトレンドを示している可能性もあります。

医療・バイオテクノロジーセクターが15分野中5位となったことからも、ライフサイエンス産業に広く影響を与えていることがわかります。

さらに俯瞰的に見た場合、セクターごとの研究連携の強さは、より工学的なセクター(自動車、航空宇宙、エレクトロニクス・半導体、電気通信)と、より科学的なセクター(化学・素材科学)に二分化することができます。ただし、エネルギー・電気セクターは例外で、もっと持続可能なエネルギー源への移行に向けた学術研究の重要性を反映している可能性があります。

最後に、Top 1,000 グローバル・イノベーターに選出された研究機関は、教職員が生み出したアイデアを商業的に展開できる発明に自ら発展させています。このことから、政府・学術研究分野は研究連携の強さで2位にランクインしています。

科学研究に対する依存度(分野別)
Top 1,000 グローバル・イノベーター2023による発明1件あたりの研究論文引用回数をインダストリーセクター別に正規化

国境を越えるアイデア

今回の分析には、グローバルに普及している研究やイノベーションが織り込まれています。アイデアに国境はありません。Top 1,000 グローバル・イノベーターの本部所在地や、イノベーターが引用した論文の著者が所属する組織が位置する国・地域を追跡できます。アイデアが国境を超えたタイミングも追跡可能です。

故に、研究アイデアが地域から地域へと広がっていく様子や、ある地域での研究と別の地域での発明開発が、どの程度関連しているかを知ることができます。

今回の分析から、欧州と米国には研究上の深い繋がりがあることがわかりました。欧州で生まれた発明の5%は米国の研究論文を引用しており、米国で生まれた発明の11%近くが欧州の研究を引用しています。

Chinese Academy of Sciencesを見れば、研究やアイデアに国境が存在しないことがわかります。Chinese Academy of Sciencesに属する研究機関への引用の95%は、中国本土を拠点としない組織によるものです。

実際、今回のデータでは、Top 1,000 グローバル・イノベーターに選出された米国の組織が中国本土の研究を引用する割合(発明の2.7%)がその逆(発明の1%)を上回っており、中国本土がアイデアやイノベーションの純然たる新しい供給源として台頭していることが明確となりました。

Top 1,000 グローバル・イノベーターの所在地域 引用 Web of Scienceの組織地域 研究の引用回数(合計) Top 1,000の発明のうち、他の地域で実施された研究を引用した割合
東アジア(中国本土以外)

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欧州

中国本土

米国

18,247

8,368

16,218

1.6%

0.7%

1.4%

欧州

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東アジア(中国本土以外)

中国本土

米国

5,297

5,584

19,728

1.4%

1.5%

5.2%

中国本土

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東アジア(中国本土以外)

欧州

米国

2,352

5,989

5,253

0.4%

1.1%

1.0%

米国

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東アジア(中国本土以外)

欧州

中国本土

11,886

53,479

13,182

2.4%

10.8%

2.7%

新しい地域を探る

国と地域

Top 100 companies by region

増加

変化なし

減少

6社がTop 100に再選出:

  • 米国からはAlphabet (Googleやその姉妹会社の親会社)、Applied Materials、EmersonがTop 100に再選出
  • 日本からはKawasaki Heavy IndustriesとNichiaが2021年以来Top 100に再選出
  • 欧州の半導体企業であるNXP SemiconductorがTop 100に再選出

5社がTop 100 グローバル・イノベーターに初選出:

  • 中国本土の電子機器企業であるAAC Technologies
  • 台湾の半導体企業であるNanya Technology
  • 同じく台湾のWinbond Electronics
  • 日本からは電気モーター企業のNidec
  • 米国からはエレベーターメーカーのOtis Worldwide

インダストリーセクター

航空宇宙・防衛

6

自動車

10

化学・素材

11

消費財・食品

4

エレクトロニクス・コンピューター機器

26

エネルギー・電気

5

政府・学術研究

3

産業コングロマリット

8

産業システム

8

医療・バイオテクノロジー

1

鉱業・金属

-

製薬

2

半導体

11

ソフトウェア、メディア、フィンテック

2

電気通信

3

増加

変化なし

減少

19社がすべての年でTop 100 グローバル・イノベーターに選出。

  • 3M
  • Boeing
  • Dow
  • Ericsson
  • Fujitsu
  • GE
  • Hitachi
  • Honda
  • Honeywell
  • LG
  • NEC
  • Panasonic
  • Qualcomm
  • Roche
  • Samsung
  • Shin-Etsu chemical
  • Sony
  • Toshiba
  • Toyota

3つのインダストリーセクターでTop 100 グローバル・イノベーターに選出された企業が増加し、半導体で3社、化学・素材で1社、産業コングロマリットで1社という結果になりました。一方、減少したセクターは自動車で2社、エレクトロニクス・コンピューター機器で2社、エネルギー・電気で1社となりました。その他のインダストリーセクターは、2022年と変わらない結果となりました。

Top 100の傾向は、より選出数の多いTop 1,000 グローバル・イノベーターで見られる傾向とは異なるものとなりました。現在のセクター別平均順位を見ると、将来的にはコネクティビティと持続可能性に注力する産業(電気通信、エネルギー・電気、コンピュータ機器)が引き続き順位を上げると予想されます。

グローバル・イノベーターの順位予測(インダストリーセクター別)
Top 1,000 グローバル・イノベーターの平均順位(順位は表示順)

グローバル・イノベーターの順位予測(国/地域別)
Top 1,000 グローバル・イノベーターの平均順位(1年の選出数が10未満の国・地域のみ/順位は表示順)

今年は政府・学術機関の平均順位向上が予想されます。現在は15分野中15位ですが、組織別の順位変動を見ると、将来的には12位まで向上する見込みがあります。

地理的に見ると、今年度の中国本土におけるTop 100の選出数は減少しましたが、より選出数の多いTop 1,000では、全体的に選出数が増加しています。これは中国本土のイノベーションの全体的なトレンドを鮮明に表しており、平均順位の向上が続くことを示しています。この兆候が顕著に見られるのが2023年で、イノベーションメトリクスが加速していると同時に、発明活動の規模が拡大しています。

事実、アジア太平洋の国・地域は同様のパフォーマンス向上を示しており、韓国、台湾、日本の平均順位が向上しています。

インテリジェンスでイノベーションに変革を

クラリベイトでは、実用的な情報とインサイトの提供を通じて、お客様が抱える難題の解決と活用をサポートしています。Top 100の背景にあるテクニック、情報、専門知識の詳細については、以下よりお問い合わせください。

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